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演劇用語の基礎知識
 外郎売
歌舞伎十八番の一つ。「ういろううり」と読みます。

享保3年(1718年)正月、江戸・森田座で、二代目市川團十郎が「若緑勢曾我(わかみどりいきおいそが)」という演目で曽我五郎という外郎売りに扮し、この口上を澱みなく諳んじ拍手喝采を浴びたというものです。

役者やアナウンサーなどが発声、発音のトレーニングによく使います。というのは皆さんご承知のとおりです。

なお、読み仮名、読み方などはうちの稽古でのものです。本来の読み方とは異なる部分があるかもしれませんのでご了承ください。

(2005.10.10追記)
いくら稽古のためとはいえ、内容の意味も分からずただ読み上げるのは稽古の意味がないと思い、せめて全文訳を…と思ったらこんなサイトがありました。→元祖うゐらう本舗
なんと、小田原の「ういろう本舗」というお店が現存し、「透頂香」という薬が今でも販売されているそうです。

 拙者(せっしゃ)親方(おやかた)と申すは、お立合(たちあい)(うち)にご存知(ぞんじ)のお(かた)もござりましょうが、 お江戸を()って二十里(にじゅうり)上方(かみがた)相州(そうしゅう)小田原(おだわら)一色町(いっしきまち)をお過ぎなされて、青物町(あおものちょう)(のぼ)りへお()でなさるれば、 欄干橋(らんかんばし)虎屋藤右衛門(とらやとうえもん)只今(ただいま)剃髪(ていはつ)いたして円斎(えんさい)と名のりまする。

 元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)まで、お手に入れまする()の薬は、 昔、ちんの国の唐人(とうじん)外郎(ういろう)という人、わが(ちょう)()たり、(みかど)参内(さんだい)(おり)から、この薬を深く()()き、 (もち)ゆる時は一粒(いちりゅう)づつ、(かんむり)のすき()より取出(とりいだ)す。 よってその名を(みかど)より「頂透香(とうちんこう)」と(たまわ)()る。 (すなわ)文字(もんじ)には、「いただき、すく、におい」と書いて「とうちんこう」と申す。

 只今は()の薬、(こと)(ほか)世上(せじょう)(ひろ)まり、ほうぼうに似看板(にせかんばん)(いだ)し、 イヤ小田原(おだわら)の、灰俵(はいだわら)の、さん(だわら)の、炭俵(すみだわら)のと、色々に申せども、 平仮名(ひらがな)()って「ういろう」と(しる)せしは親方円斎ばかり。 もしやお立合(たちあ)いのうちに、熱海(あたみ)(とう)(さわ)湯治(とうじ)にお(いで)なさるるか、 (また)伊勢(いせ)()参宮(さんぐう)(おり)からは、必ず(かど)ちがいなされまするな。お(のぼ)りならば(みぎ)(かた)、お(くだ)りなれば左側(ひだりがわ)八方(はっぽう)()(むね)、おもてが()(むね)玉堂造(ぎょくどうづく)り、破風(はふ)には(きく)(きり)のとうの御紋(ごもん)をご赦免(しゃめん)あって、 系図(けいず)正しき(くすり)でござる。

 イヤ最前(さいぜん)より家名(かめい)自慢(じまん)ばかり申しても、ご存知ない(かた)には、 正身(しょうしん)胡椒(こしょう)丸呑(まるのみ)白河夜船(しらかわよふね)、さらば一粒(いちりゅう)たべかけて、その気味合(きみあ)いをお目にかけましょう。
  ()()の薬を、かように一粒(いちりゅう)(した)の上にのせまして、腹内(ふくない)(おさ)めますると、 イヤどうも()えぬは、()(しん)(はい)(かん)がすこやかに()りて、薫風(くんぷう)(のんど)より()たり、 口中(こうちゅう)微涼(びりょう)(しょう)ずるが(ごと)し。魚鳥茸(ぎょちょうきのこ)麺類(めんるい)食合(くいあわ)せ、その(ほか)万病速効(まんびょうそっこう)あること神の(ごと)し。

 さてこの薬、第一の奇妙(きみょう)には、舌のまわることが(ぜに)独楽(ごま)がはだしで()げる。 ひょっと舌がまわり()すと、()(たて)もたまらぬじゃ。そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたは、まわってくるは、アワヤ(のど)、 サタラナ(した)に、カ()歯音(しおん)、ハマの二つは(くちびる)軽重(けいちょう)開合(かいごう)さわやかに、 アカサタナ、ハマヤラワ、オコソトノ、ホモヨロヲ、一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、 (ぼん)まめ、盆(ごめ)、盆ごぼう、摘蓼(つみたで)摘豆(つみまめ)、つみ山椒(ざんしょう)書写山(しょしゃざん)社僧正(しゃそうじょう)粉米(こごめ)のなま噛み、粉米のなま噛み、こん粉米の小なま噛み、儒子(しゅす)緋儒子(ひじゅす)、儒子、儒珍(しゅっちん)(おや)嘉兵衛(かへい)()も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、 ふる(くり)の木の古切口(ふるきりぐち)
 雨合羽か(ばん)合羽(がっぱ)か、貴様(きさま)のきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)我等(われら)がきゃはんも皮脚絆、 しっかわ(ばかま)のしっぽころびを、三針(みはり)はりなかにちょと()うて、ぬうてちょとぶんだせ、 河原撫子(かわらなでしこ)野石竹(のせきちく)。のら如来(にょらい)、のら如来、()のら如来に()のら如来。 一寸先(ちょっとさき)のお小仏(こぼとけ)におけつまづきゃるな。細溝(ほそどぶ)にどじょにょろり。(きょう)生鱈(なまだら)奈良(なら)なま学鰹(まながつお)、ちょと四五貫目(しごかんめ)、 お茶立(ちゃた)ちょ、茶立ちょ、ちゃっと立ちょ茶立ちょ、青竹茶煎(あおだけちゃせん)で、お茶ちゃと立ちゃ。

 ()るは来るは何が来る。高野(こうや)(やま)のおこけら小僧(こぞう)(たぬき)百匹、箸百膳(はしひゃくぜん)天目百杯(てんもくひゃっぱい)(ぼう)八百本、武具(ぶぐ)馬具(ばぐ)、武具馬具、()武具馬具、(あわ)せて武具馬具()武具馬具、 (きく)(くり)、菊栗、()菊栗、合せて菊栗、()菊栗、 (むぎ)ごみ麦ごみ、()麦ごみ、合わせて麦ごみ()麦ごみ。 あの長押(なげし)長薙刀(ながなぎなた)は、()長薙刀(ながなぎなた)ぞ。 向こうの胡麻(ごま)がらは、()胡麻(ごま)がらか、()胡麻(ごま)がらか、 あれこそほんの真胡麻(まごま)がら、がらぴいがらぴい風車(かざぐるま)、おきゃがれこぼし、おきゃがれ小法師(こぼうし)、 ゆんべもこぼして又こぼした、たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、 たっぽたっぽ一丁(いっちょう)だこ、()ちたら()()お、煮ても焼いても食われぬものは、五徳(ごとく)(てっ)きゅう、かな熊童子(ぐまどうじ)に、石熊(いしくま)石持(いしもち)虎熊(とらくま)、虎きす、(なか)にも東寺(とうじ)羅生門(らしょうもん)には茨城童子(いばらぎどうじ)がうで(ぐり)五合(ごんごう)つかんでおむしゃる。かの頼光(らいこう)のひざ(もと)()らず。
 (ふな)、きんかん、椎茸(しいたけ)(さだ)めて後段(ごだん)な、そば()り、そうめん、うどんか愚鈍(ぐどん)小新発知(こしんぼち)小棚(こだな)小下(こした)小桶(こおけ)にこ味噌(みそ)がこ()るぞ、 小杓子(こしゃくし)、こ()って、こすくってこよこせ、おっと合点(がてん)だ、 心得(こころえ)たんぼの川崎(かわさき)神奈川(かながわ)程ヶ谷(ほどがや)戸塚(とつか)は走って行けばやいとを()りむく。

 三里(さんり)ばかりか、藤沢(ふじさわ)平塚(ひらつか)大磯(おおいそ)がしや、小磯(こいそ)宿(しゅく)を七つ()きして、 早天早々(そうてんそうそう)相州小田原(そうしゅうおだわら)とうちんこう、(かく)れござらぬ貴賎群衆(きせんぐんじゅ)の花のお江戸の花ういろう。 あれ、あの花を見てお心をおやわらぎや、という。産子(うぶこ)()()(いた)るまで、 ()のういろうのご評判(ひょうばん)、ご存知ないとは申されまいまいつぶり、(つの)だせ、棒だせ、 ぼうぼうまゆに、うす、(きね)、すりばち、ばちばちぐゎらぐゎらぐゎらと、 羽目(はめ)をはずして今日(こんにち)()でのいずれも様に、 ()げねばならぬ、売らねばならぬと、(いき)せい()っぱり、東方(とうほう)世界の薬の元締(もとじめ)薬師如来(やくしにょらい)照覧(しょうらん)あれと、ホホ(うやま)って、ういろうはいらっしゃりませぬか。
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